これまで生物学者たちは、免疫をはじめとする生物の重要な機能(働き)を担う分子を多数みつけてきました。目星をつけた分子が他の分子や細胞にどのような影響を与えるかを調べることで、その分子のもつ働きを明らかにしてきたのです。一般に、ある機能を生み出すにはその分子とそれ以外の分子との間に関わりが必要です。この関わりの集まりによって、分子の間に一種の社会が作られており、これをシステムと呼んでいます。このようなシステムがたくさん集まって、さらに大きなシステムとして調和して働き、免疫のような複雑な機能がわたしたちの体内で実現されています。このシステムという考え方に基づいて、生物の機能の全体像を明らかにしようとする研究をシステムバイオロジー(Systems Biology)といいます。

免疫システムの中では、多くの分子や細胞が複雑に関わり合って、微妙なバランスを形作っているので、これまでのように個々の分子の働きを明らかにするだけではとても全体像を理解することはできません。そのためには現象が複雑過ぎるのです。これに対して、システムバイオロジーでは、すべての遺伝子のふるまいを先入観なしに根こそぎ調べる実験を行い、その結果をコンピュータで分析することで、新しい分子や分子同士の関係を見つけ出そうとします。そのためには、今までの研究でわかっている分子や細胞の働きをもとに、外から何らかの刺激を与えたときのシステムのふるまいをコンピュータで予言します。この予言した結果と、実験で得られたデータを比較することで、未知の分子や、分子同士のつながりを発見しようというのです。

わたしたちは現在、DNAから情報を読み取る「転写」という現象に着目して、免疫細胞内で分子同士がどのように関わり合って免疫細胞として働いているのかを理解しようとしています。この理解を通じて、免疫システムの全体像に迫っていくことを目指しています。

2010/08/05 15:14

サブテーマ6 リーダー
中井 謙太中井 謙太 / Kenta NAKAI
研究分担者
鈴木 穣鈴木 穣 / Yutaka SUZUKI
Ashwini PATILAshwini PATIL
熊谷 雄太郎熊谷 雄太郎 / Yutaro KUMAGAI