細菌やウィルスなどの病原体が私たちの体に侵入すると、免疫細胞の中ではたくさんの分子がネットワークのようにつながって情報をやりとりし、免疫反応がひきおこされます。これらの分子の中でもタンパク質が重要な働きをしますが、どのようにして、タンパク質分子が情報をやりとりして免疫反応を引き起こすのでしょうか。

わたしたちが専門とする「構造生物学」では、核磁気共鳴(NMR)法やX線結晶構造解析法をもちいて、タンパク質分子の形を詳しく調べ、形の変化から機能がどのように変化するのかを調べています。タンパク質はその形によって性質も変わるのです。免疫反応では、「病原体がいる!」という情報は、病原体のもつ分子と免疫細胞表面にあるタンパク質が結合することで細胞に伝えられます。タンパク質は分子との結合によって形が少しだけ変化し、形の変化はそのタンパク質の性質も変化させます。その結果、タンパク質は他の分子を切断したり、結合させる機能を持ちます。切断した分子や結合させた分子を、細胞内の様々な場所に送り出すことで、その情報を伝えます。このようなタンパク質分子は細胞の中にはたくさんあり、それらが情報伝達のネットワークをつくっていると考えられます。すなわちタンパク質の形は免疫反応と密接な関係があるのです。しかし、そのタンパク質の形と機能について、私たちはまだ十分に理解できていないのです。

IRF-3の二量体の構造

形と機能の関係をコンピュータによる解析をつかって明らかにしようとしているDaron Standley先生(大阪大学)と協力しながら、私たちは、タンパク質分子の形から機能を調べることで、分子が他の分子とどのように関係しているか、どのように繋がって免疫として私たちの体を病原体から守っているのかを明らかにしようとしています。免疫反応とタンパク質の形の関係を知ることは、タンパク質の形情報をもとに新しい薬剤を開発するためにも、とても重要なのです。

2010/08/05 15:13

サブテーマ5 リーダー
稲垣 冬彦稲垣 冬彦 / Fuyuhiko INAGAKI
研究分担者
Daron M. STANDLEYDaron M. STANDLEY