12. 論文が書ければ、特許も書ける!サイエンスしながら特許は書ける!

 研究の予備的段階で、研究成果が特許になりそうな場合には、論文化に必要なレベルまで十分なデータがなくても発明の本質的な基礎的実験結果・原理等が得られれば、先願主義のため早く特許出願することが重要です。また下表のように、論文と特許出願書類は構成がほぼ同じであり、論文が書ければ、基本的には特許の出願書類は書けるはずです。ただ下表の赤字で示した【特許請求の範囲】(現在は明細書とは独立した書類)と【産業上の利用可能性】は、論文には無いものなので、専門家の力が必要です。
 滅多にないことですが、競合している組織がある場合には、出願が1日違いのこともあり、後で出願した者は特許を得ることができず、研究が無駄になってしまいます。約30年位前に調査しているときに、現在は遺伝子組み換え植物の市場を握っているモンサントという米国の会社の植物の遺伝子組み換えに関する基本特許出願が、ドイツのマクスプランクの特許出願より1カ月遅れでした。その特許をライセンスしてもらったのか、潰したのか知りませんが、企業ではライセンスを受けるという選択肢があります。しかし大学では後願になっては、全く無用になってしまいます。ip_12_fig1.png大学組織では発明届を提出した後、大学承継の審査があるため、特許出願のために特許事務所と打ち合わせができるまで、かなり時間がかかります。特許事務所と打ち合わせをしてからさらに2週間から1ヶ月程度はかかりますので、とにかく予備的結果が出たときに早く学内の出願手続きに入るようにしたほうが良いと思います。
 特許にあまり慣れていない研究者は、なぜそのような結果になったかが分からないと出願の相談に来ないのですが、前述したように特許の場合には、「なぜ」は不要なのです。また論文化できるほどのデータが揃っていなくても、繰り返しますが、早く出願することが大事です。
 予備的実験結果でも最初の出願の明細書に記載していれば、1年以内の国内優先権を主張して、出願から1年以内に行った実施例を補強できることと、審査の段階で、出願後に得られた実験結果を利用した実験証明書等で特許性を主張することができるからです。
 【特許請求の範囲】は、特許出願書類で最も重要なものですが、そこには「特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項の全てを記載しなければならない。」ことと、「特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであること。」と特許法で規定されています。具体的には発明の可能な限り(公知になっていない)、大きな概念を記載します。例えば、亜鉛⇒亜鉛族元素⇒3d遷移元素⇒遷移元素⇒金属(大きな概念)で、用途や化合物の特許の場合に、公知になっている分類の下位の分類、例えばその用途等で遷移元素が公知である場には、3d遷移元素を最上位の特許請求の範囲にします。特許請求の範囲は、侵害・非侵害が、ある程度分かる人が書かないと排他性のある特許にならないことがありますので、最初は専門家に委ねるのが良いと思います。
 【明細書】は、特許法第36条第4項及び特許法施行規則第24条の2の規定に従い、発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(当業者)が、その実施をすることができるように明確かつ十分に記載しなければいけません(実施可能要件)。

〔文責:知財戦略コーディネーター 前田裕司〕

 

この記事に関して、質問やコメント等がございましたら、前田知財戦略コーディネーター(akira-ipsc@ml.office.osaka-u.ac.jp)までお寄せください。

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