〔基本的事項〕
 1. 大学知財をどう考えるか?

平成18年に教育基本法が改正され、大学の目的として従来の教育、研究に加えて「社会貢献」が追加されました。大学の研究成果について社会貢献とはどのようなことを指すのでしょうか?一つには製品化に繋げる企業との共同研究開発を進めるということが考えられます(どこかの段階で特許出願)。また単に論文発表、学会発表で世の中に研究成果を広めることも考えられます。

改正教育基本法では社会貢献について細かく規定されているわけではないので、以下の2点をご理解いただいた上で、研究者ご自身の考え方に合った社会貢献の方法を選択されることをお勧めします(1の詳細①)。

1)研究者によっては、論文発表や学会発表をして無償で自由にご自分の研究成果を使ってもらえばそれで良いとお考えになる方もいらっしゃいますが、発表による公知化で、広い範囲の特許がとれなくなります。広く企業に使ってもらおうと考えていても、企業では研究者の意に反して既に発表されている研究成果についての研究開発は行いません。

2)企業と共同研究をしている場合も含め、大学で行った実験から発生する発明(学生は従業者ではない)は、職務発明(大学に帰属)に該当する場合がほとんどだと考えられ、大学の産学連携本部知的財産部の審査を受ける必要があります(1の詳細②)。

(研究分野で異なる)

企業においても業種が違えば、知財に対する考え方も違うのと同じように、大学でも研究分野によって異なります。例えば、研究成果の知財化が比較的容易な材料研究等では、恐らく研究目的が、特許でいう「解決すべき課題」に近いものが多いと考えられます。しかしながら、審良プロジェクトのように、生体の自然免疫や病態のメカニズムを分子、遺伝子レベル等で研究している場合には、必ずしも、直接的に「解決すべき課題」には結び付かない場合が多く、学会での競争が激しい場合、不慣れな明細書作成のために時間を割いて特許出願することが、必ずしも良いとは考えられません。

(英語で出願できる)

審良プロジェクトのほとんどの研究成果は英語で論文化されることが多いと思います。出願明細書を作成するためにわざわざ日本語に翻訳するのは研究者にとって耐えがたい作業になると思いますが、日本の特許法には外国語(英語)で出願できる制度があります。この英語出願は、審良プロジェクトのように先端分野の研究成果の知財化には良い方法ではないかと考えられます(1の詳細③)。

(知財化するメリット)

1)特許出願の場合、方式審査をパスすれば特許出願日が認定されます。田中耕一氏のノーベル賞受賞は、特許出願日で研究が先行している証拠になったという話を聞いたことがあります。

2)京都大学の松重教授の調査によればノーベル賞受賞者の福井謙一先生は、論文化だけではなく特許出願も多くされ、特許出願を基礎にして企業との共同研究が進展し、企業との共同研究によりグローバルに研究成果が広まり、ノーベル賞に繋がったとされています(1の詳細④)。

3)身近には、大阪大学の岸本忠三先生と中外製薬との共同研究の例があります。90か国以上で難病の治療薬が製品化され、知財のライセンス収入を大学に寄付、若手または外国人研究者に対する研究ファンド、優秀な学生への奨学金などに充てられています。論文投稿前に大学の発明委員会に届け出て承認を得た後に、企業が活用しやすいような特許出願ができるように、企業に任せられたそうです(1の詳細⑤)。

〔文責:知財戦略コーディネーター 前田裕司〕

 

この記事に関して、質問やコメント等がございましたら、前田知財戦略コーディネーター(akira-ipsc@ml.office.osaka-u.ac.jp)までお寄せください。

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