① 共同出願(8の詳細①)

 共同出願は、基本的に特許発明の権利を守る方の手続きは片方だけでもできるのですが、放棄や第三者の使用等に関しては制限がかかります。特に大学と企業では特許法上は圧倒的に企業が有利なので、出願費用を負担してもらうためだけの共同出願は止めたほうが良いと思います。
 実際に発明の実施に企業側が努力してくれればよいのですが、必ずしもそうではない場合が多いと思います。例えば製造コストが下がるような合成法の発明で、プロセスを改造せずに行えるものがあったとしても、すでにプラントで生産している場合は、生産された製品の品質の保証、特に安定性(製品寿命が長いもの)が必要な場合には長時間かけて寿命を調べる試験をしなければならず、よほどのことがない限り新しい合成法に変えることはしないと考えられます。かといって第三者にその発明を使われると、コスト面で競争が厳しくなるのを避けたがるため、特許の維持は工業生産から見たら大したことがないことからも、第三者への実施許諾はせず、「飼い殺し特許」になる可能性があります。
 また企業は、最初は本気で開発しようとしたとしても、いろいろな事情で開発を断念することもあります。企業が、開発を断念してから、大学側に何処に実施許諾しても、譲渡しても良いと例えいったとしても、第三者は、儲けるネタを売りに出すはずがないと通常思います。売りに出している特許は経済性、又は技術面で採算が取れるような製品でないと、通常、判断して買ってくれません。したがって共同出願をする場合には相手の企業がどこまでやる気があるのかよく見極めて共同出願することが大事だと思います。
 「5.発明者とは」のところでも述べましたが、真の発明者とは、発明の具体的着想や具体的解決手段を提供し、技術的思想の創作行為に加担し、発明の完成に貢献した者であって、経済的・物理的に支援した者は発明者にはなりません。企業との関係を壊したくないと思って、無理をして企業の研究開発者を発明者にして共同出願をするようなことは避けたほうが良く、可能であれば大学の単独の出願にしたほうが良いと思います。単独で大学が出願する価値があると認められる研究であれば大丈夫のはずです。私の言うことではないかもしれませんが、一橋ビジネスレビュー、第61巻、第3号、pp.170-178(2013)に岸本先生がお書きになっている「ひとのやっていなことをやれ」といわれています。大きな視点で捉えて研究すれば、まだまだ未知の分野がいっぱいあると思います。

〔文責:知財戦略コーディネーター 前田裕司〕

この記事に関して、質問やコメント等がございましたら、前田知財戦略コーディネーター(akira-ipsc@ml.office.osaka-u.ac.jp)までお寄せください。

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