① 特許出願 (3の詳細①)

 特許は、2の詳細①で述べたように多大な費用、労力、時間等をかけて得られた研究開発の成果を保護するモノであっって、単独で特許が急に出現するものではありません。
 そのために、企業では研究開発を始める前に下図の如く、先行特許技術があるか否かを調査します。
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 もし自分が始めようとする研究に関する先行特許技術調査をしないで研究を始めた場合、万が一、第三者が既に関連する特許出願をしていると、まず自分の研究成果を特許出願しても特許が取れないか、また取れたとしても狭い範囲の特許しか取れない可能性があります。もっと重要なことは、その先行特許が登録されている場合には法的に守られた権利となりますので、他者の特許を侵害するようなことにもなってしまいます。又は自分の知らない特許権者のために研究をすることになります。発表すればするほど自分の知らない特許権者の特許の有効性を示すことになるので特許権者は陰で微笑むことになります。
 例え先行特許技術調査で100万円代の費用がかかったとしても、侵害して、特許権者から訴えられた場合には二桁も三桁も上の損害賠償金の支払いなどに繋がる可能性があることに比べると、少ないものです。特許法では、特許権の効力は試験又は研究のためにする特許発明の実施には、及ばないと規定されていますので、大学であればそんな問題がないだろうというように思われるかもしれませんが、米国では大学側が侵害と判断されたり、日本でも大学が訴えられたことはあります。
ip_03_sub1_fig2.png したがって大学の研究者であっても、ご自分の研究に関する先行特許技術調査は事前にした方が良いと思います。また、先行特許技術調査はそのようなマイナス防止のためだけではなく、広い範囲の特許調査をした場合に、自分の予想もしていない用途等についての情報源にもなり得ます。単に私だけが知らなかっただけかもしれませんが、私が芝生の農材の知財担当をすることになったときにキーワード「lawn」or「turf」で検索したら3000件くらいがヒットして、調べているうちに芝刈り頻度を下げるために「芝生成長阻害剤」が結構多く出願されていました。通常、植物については成長促進剤などが多く研究されていましたので、阻害剤は全くの予想外でそれなりに勉強になりました。さらに企業の研究者は特許出願はしても学会発表や論文化はしないことも多く、機械や電機などの分野などの研究は、先行特許技術調査をしないと既に研究されているのか否か分からないこともあります。
 大阪大学ではトムソンロイターの特許調査は無料で可能ですし、また全国で、無料でできる特許電子図書館を利用することができますので、是非、先行特許技術調査をされることをお勧めします。
〔トムソンロイター Web of Knowledge〕
  http://webofknowledge.com/diidw
〔特許電子図書館〕
  http://www.ipdl.inpit.go.jp/homepg.ipdl

 次に、どのくらいのデータが出た時点で特許出願を検討すべきか?については、予備的実験データが出た段階で出願を検討すべきです。特許では論文と違って再現性が得られればそれでよいのであって学問的に求められる論理も必要がありません。論文では何故が必要ですが、特許の場合には何故は不要です。昔の特許の明細書には、決まり文句のように「・・・・の状況に鑑み、鋭意研究した結果、驚くべきことに・・・・の知見を得、本発明に至った」と書かれていました。何故そういう結果が得られたか、今までの知見で推測できるのであれば、逆に進歩性等が否定されることになります。
 例えば生物には個体差があるので、統計的有意差を検定するためにt-検定などではnが6以上ないと検定できないのですが、特許の場合には再現性が得られることが大事なのでn=3でも再現性が得られるのであれば問題ありません。後で出てきますが、現在特許制度は先願主義(早い者勝ち)といって早く特許庁に届けることが重要ですので、データを充実させようとするよりも、ある程度の再現性が得られれば早く出願することが大事です。
ip_03_sub1_fig3.png 上記のような基本出願ができれば開発の経過に伴っていろいろな知財出願をします。
 大学では製品化の開発は通常行いませんが、大学の基本特許が、企業でも使われ得るためには他社の知財を侵害しないことが一番重要視されますので、どこかの企業と共同研究をしたいと思われている研究者の方は、先行特許技術調査をしたほうが良いと思います。

〔文責:知財戦略コーディネーター 前田裕司〕


この記事に関して、質問やコメント等がございましたら、前田知財戦略コーディネーター(akira-ipsc@ml.office.osaka-u.ac.jp)までお寄せください。

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